空を行く(2)

小鳥は、夢を見ていました。
何度も繰り返す、同じ夢です。
それは、空高く舞い上がろうとしたとき、胸に強い衝撃を受けて
地面に落ちていく・・・という、あのときの夢でした。

小鳥はその夢を見るたび、息が苦しくなりました。
パチッと目が覚めても、心臓がドキドキしています。
怖い、怖い・・・小鳥は心の中で、涙を流しました。

そんなとき、決まって頭に浮かぶものがありました。
青い小さな光です。
最初は小さく点滅して、その後、
小鳥の頭の中をゆっくりと回り始めるのです。

小鳥は、その小さな青い光の動きを追っているうちに、
鼓動が静かになり、安らかな眠りの中に落ちていきました。
そんなことが何回続いたでしょうか。
小鳥は次第に、その夢を見なくなっていきました。

        *        *        *

しばらくたった、ある休日の朝のことです。
男の子は、小鳥に、「よう、おはよう。元気かい?」と声をかけました。
そしてふと、そうだ、今日は小鳥と一緒に外を散歩してみよう、と思い立ちました。
まだ空を飛べなくても、肩に乗せて歩くくらいなら、大丈夫かもしれない。
男の子は、小鳥に、外の空気を吸わせてあげたい、と思ったのです。

もし、飛んで行ってしまっても、それならそれでいいや、とも思いました。
そこで、男の子は小鳥を箱からそっと出して、自分の肩に乗せました。
小鳥は不思議そうに、首を傾けています。
その様子がかわいいなと思いながら、男の子は小鳥に、
「ちょっと外を散歩してみようよ。いやだったら、すぐに帰るからね」と言いました。

小鳥には、男の子の言葉はわかりませんでしたが、
どこかへ行くようだ、というのは何となく察したようでした。
小鳥は外へ出るのは怖い、という気持ちがあったのですが、
男の子と一緒なら、大丈夫なような気がしました。
「さあ、行こう」男の子は、ゆっくり玄関を開けました。

        *        *        *

外には、気持ちのいい秋の空が広がっていました。
庭のコスモスが可憐に風に揺れ、胸いっぱいに吸い込みたくなるような
澄んだ空気に満ちていました。

何ヶ月ぶりに感じる、外の世界の空気でしょう。
小鳥は、忘れていたものを思い出すように、目をぱちくりさせながら
ただただ、新鮮な空気を吸い込みました。

そのときです。チチッ、チチッ、と上の方で、鳥の鳴き声が聴こえました。
小鳥と男の子が一緒に空を見上げると、家の前の大きな木に、
小鳥とよく似た、小さな鳥が留まっていました。

小鳥はなんだか、不思議な気がしました。
自分も、以前は、あんな高いところにいたのだろうか・・・そんな気持ちです。
男の子も大きな木を見上げて、「やあ、君の仲間がいるよ。呼んでいるのかな?」
と言いました。小鳥はただただ不思議そうに、その小鳥を見上げています。

        *        *        *

「飛べるかい? 飛んでごらん」男の子はそっと、促しました。
小鳥はその声に応えるように、バサバサッと翼を動かしましたが、
まだ飛び上がることはできませんでした。
それでも、そのとき、小鳥の頭の中で、何かが閃いたようでした。
ああ、飛べるのかもしれない。そんな感覚です。

男の子は、小鳥のそんな様子をじっと見守っていましたが、
「まだ、今日は初日だからね。十分、十分」と言って、
「さあ、家の近くを少し歩こう」と、
小鳥を肩に乗せたまま、近所を散歩し始めました。
そんなふたりの後ろ姿を、大きな木に留まった小鳥が見送るように、
静かに見つめていました。

(つづく)


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    空を行く(1)

    小鳥は、旅に出るところでした。
    大きなバンに乗った賑やかな家族と一緒に、
    南へ渡ろうと思っていたのです。

    それは、突然のことでした。
    物陰から飛び立った小鳥が、高く舞い上がろうとしたとき、
    遠くの空に向かって石を投げている、意地悪そうな男がいました。
    その男が投げた小石が、ちょうど、小鳥の胸に当たってしまったのです。

    小鳥は強い痛みを感じ、地面に向かって落ちていきました。
    落ちながらも必死に、その男から見えなくなるところまで
    逃げていきました。

    そして、男の視界から見えなくなったあたりで
    小鳥は力尽き、意識を失って、地上へと落ちていきました。

            *        *        *

    翌日のことです。
    ある男の子が、友達のところへ行こうとして
    自転車に乗りました。すると、カゴの中に
    何かがうずくまっているのを見つけたのです。

    それは、胸のあたりにうっすらと血が滲んだ小鳥でした。
    ぴくりとも動かず、生きているのか、死んでいるのかもわかりません。
    男の子はびっくりして、両親を呼びに行きました。
    両親と男の子は、心配そうに、カゴの中から小鳥をそっと取り出しました。

    男の子は、動かない小鳥を、柔らかいタオルで包み、
    お父さんの車に乗って、獣医さんのところへ行きました。
    獣医さんは、念入りに小鳥を診たあと、「大丈夫、まだ生きているよ。
    しっかり手当てをすれば、また飛べるようになるかもしれない」と言いました。

    獣医さんは、翼をよく調べてから、注射を打ち、小鳥の胸に薬を塗り、
    包帯を巻きました。小鳥はその間ずっと、目を閉じたままでした。
    男の子は来た時と同じように、小鳥をそうっとタオルで包み、
    お父さんの車で、家に連れて帰りました。

            *        *        *

    小鳥は、その日から、男の子の部屋で暮らすことになりました。
    男の子は、小さなダンボール箱を用意して、柔らかいタオルを敷きつめ、
    その中に、薬を入れた水飲み場と、パンのかけらを細かくちぎった餌場を用意して、
    小鳥を静かに箱の中に入れました。小鳥は相変らず、目を閉じたままでしたが、
    男の子は手の中で、小鳥のかすかな体温を感じたように思いました。

    翌朝のことです。男の子は、チ、チ、という小さな鳴き声を
    聞いたように思って、目を覚ましました。
    急いで箱の中を見てみると、胸に包帯を巻いた小鳥が、
    男の子を見上げていたのです。

    「やった!」男の子は、小さくガッツポーズをして、
    慌てて両親を呼びに行きました。
    「見て!ほら、目を覚ましたよ!」男の子はうれしそうに
    両親に言いました。

    「あら、まあ!」「生き返ったんだね」男の子の両親は
    うれしそうに言いました。お母さんの目には、うっすら
    涙が滲んでいるように見えました。

    小鳥はまだ、おぼつかない足どりでしたが、
    ゆっくり水を飲んでは、チ、チ、と鳴いていました。

            *        *        *

    1ヶ月がたちました。小鳥はすっかり元気になり、
    家の中を飛びまわるようにもなっていました。
    ただ、まだ、外には出られませんでした。

    男の子は窓を大きく開けて、
    「ほら、飛んでごらん。外は気持ちがいいよ」と促すのですが、
    小鳥はなぜか、窓際まで行って、また家の中に戻って来てしまうのです。

    「よっぽど怖い思いをしたんだね」男の子のお父さんが言いました。
    「そのうち、外にも出られるようになるわよ。時間をかけて、ゆっくり待ちましょう」
    と、お母さんも言いました。
    男の子は、小鳥が早く、空を飛べるようになるといいなと思いましたが、
    同時に、いつまでも家にいて欲しいなとも思っていました。
    朝起きて、小鳥の様子を見るのが、とても楽しみになっていたのです。

    でも、小鳥は野生の鳥です。
    傷が治って飛べるようになったら、もとの世界に返すのが
    一番いいだろうと、男の子も思っていました。
    「おうい、明日は外に出られるといいな」
    眠りにつく前、毎日男の子はそう話しかけるのでした。

    (つづく)

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      おやすみ(2018)

      時間って
      降り積もるものかもしれないな
      と思う

      どんなに深く空いた穴でも
      静かに、静かに
      そっと、少しずつ
      まるで雪のように降り積もって
      埋めていくものかもしれない

      それは
      明確な何か、や
      喜びやうれしかったこと、じゃなくても
      苦しみやつらい気持ちだったとしても
      いつか、静かに
      やわらかいものに変わって
      少しずつ、少しずつ
      埋めていくように思う

      おやすみ
      静かに降り積もる
      時間とともに
      眠れ





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        選択

        何が正しかったのだろう
        と思うことがある
        過去のたくさんの選択
        たぶん、
        そのときどきの強い思いで
        選び取ってきたのだと思うけれど

        今が良ければいいじゃないか
        という思いもたしかにある
        でも、もし、今が悪かったら?
        過去のどこかの時点で
        選択を誤ったのだろうか?
        と思うと、頭がぐるぐる回る気がする

        以前、音楽のカテゴリで紹介した
        夏木マリさんの『Player』という歌には
        「答えなどない そこにはない 机の上には」
        という一節がある。そして、こんな風に歌っている。
        「I'm player 答え合わせは 最後の最後で」


        もしもこの道を選ばなかったら
        会えなかった人
        できなかった体験
        知らなかったこと
        そういうものが山ほどあると思うと、
        人生は不思議だ

        考えたところで
        過去の選択は変えることができないし
        たぶん、過去から学べること・・・
        もう少し忍耐強くあろうとか、
        一人で決めないで誰かに相談しようとか、
        そういう教訓みたいなものを
        拾うことしかできないのだろうな

        そして、佐野元春さんが『境界線』という歌で歌うように
        「どんなオチがついても 選んだ道に花を飾って」
        生きていけたらいいのだろうなあ、と思ったりする

        あと、関係ないけど、今週から星野源くんの『アイデア』
        配信開始されましたね。これもいい歌だよね!





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          箱舟

          きらきらと輝く
          思い出のかけらを詰めこんだ
          僕らの箱舟
          楽しさと喜びが
          いっぱい詰まってる

          悲しみやつらい思い出は
          そっと海に沈めて
          まだ見ぬ島々や
          大陸を目ざして
          この海原を進んでゆこう

          経験は力になる
          思い出はきっと、愛に変わる
          僕らは力と愛を抱きしめて
          この大海原を渡ってゆこう





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            「ハリーとくーちゃんのおはなし」の登場人物紹介

            🔵ハリー・・・・・毛がふわふわのハリネズミ。お家にいるのが好きだけれど、
                     最近は外の世界に心惹かれている。

            🔵くーちゃん・・・ハリーの親友のくま。赤いチェックのベストがお気に入り。
                     おっとりとして優しい性格。

            🔵リリカさん・・・ハリーとくーちゃんと一緒に暮らしている女の子。
                     想像するのが大好き。お料理が上手。

            🔵コロン・・・・・森に住んでいる不思議な生きもの。
                     小さくて白くて丸く、ふわふわの毛で覆われていて、
                     仲間と一緒に暮らしている。

            🔵フレディ・・・・旅ネズミの一族のひとり。大きな耳と目をもっていて、
                     いい香りの草花を求めて旅をしている。

            🔵ポー・・・・・・雨の日にふらっと現れる、白い仔馬。
                     ほとんどしゃべらないけれど、会えるとラッキーなことが起こるらしい。





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              雨の日の仔馬(3)

              「おうい、こんにちは・・・」ドアを開けると、小さな声がしました。
              声は足元から聞こえてくるようだったので、リリカさんがよく見ると、
              それは、めいめい、黄色いレインコートをかぶった、小さなコロンたちでした。

              「あっ、コロンちゃんだったの!どうしたの、こんな雨の日に・・・?」
              「雨だから、リリカさんたち、どうしてるかなあと思って、遊びに来ちゃった」
              小さなコロンたちは、雨に打たれながら、にこにこして言いました。
              「そうだったの。さあ、入って入って。ちょうど、アップルパイが焼けたところなの」
              リリカさんがそう言うと、コロンたちは、「ほんと!? いいときに来たなあ」と大喜び。

              リリカさんはコロンを招き入れて、ハリーとくーちゃんに、
              洗面所からタオルを持ってきてくれるように頼みました。
              そして、小さなレインコートを一着ずつ、スリッパかけにかけながら、
              コロンの体をていねいに拭いてやりました。

              「やあ、とってもすっきりしたよ。どうもありがとう。あれっ・・・?」
              コロンは、部屋の中にいる白い仔馬に気がついて、声を上げました。
              「あれ、ポーじゃない? ポーだよね?」と、仔馬に向かって話しかけました。
              仔馬も気がついて、きょとんとした顔でコロンを見ています。
              ハリーとくーちゃんとリリカさんは、「えっ、この子のこと、知ってるの?」と、
              驚いた顔でコロンたちを見つめました。

                       *         *         *

              「ふうん、そういうわけだったんだ・・・」、アップルパイを頬張りながら、コロンは頷きました。
              「そうなの、大きな樹の下で雨宿りをしていてね・・・寒そうだったから」と、リリカさん。
              「家に入ったら、すぐ寝ちゃったんだよ。気持ちよかったんだね」と、ハリーとくーちゃん。
              仔馬は満足そうに、アップルパイを食べ続けています。

              「この子は、ポーっていう名前なの?」と、リリカさんが聞くと、
              「うん、そうだよ。といっても、僕たちが勝手につけたんだけどね。
               ポーは、ほとんどしゃべらないし。でも、このへんじゃ、ちょっと有名なんだ。
               ポーに会えるとラッキーなことがあるって、言われているんだよ」と、コロンたち。
              「僕らはね、雨の日に森を散歩しているときに、初めてポーに会ったんだ。
               そしたらその夜、雨が上がって、満天の星空に流れ星をたくさん見たんだよ。きれいだったなあ」
              と、コロンはうっとりと思い出すように言いました。

              「だからね、きっと、リリカさんたちにも、いいことがあるよ。楽しみだね」
              そう言われて、ハリーもくーちゃんも、リリカさんも、わくわくしました。
              「たくさんの流れ星かあ・・・。楽しみだね」「そうだね」「見てみたいね!」と、
              3人は、顔を見合わせてにこにこしました。
              コロンは、「僕らはすでに、おいしいアップルパイが食べられて、とってもラッキー」と、ご満悦。
              仔馬は、そんなみんなの思いを知ってか知らずか、食べ終わって満足そうにしています。

                       *         *         *

              夕方になって、雨足は徐々に遠ざかって行きました。
              曇り空の隙間から、ところどころ、陽も差し込んでいます。
              「あああ、おいしかった。リリカさん、どうもありがとう」と、コロンたち。
              「そろそろお家に帰ろうかな。レインコートは、もう乾いたよね」と、帰る準備を始めると、
              仔馬も、「一緒に帰る」とでもいうように、とことこと玄関の方に歩いて行きました。

              「ポー、帰っちゃうの?」と、ハリーが聞くと、仔馬はうん、と頷きました。
              そして、ハリーとくーちゃんに、そっと、頬ずりをして、リリカさんの手を、ペロリと舐めました。
              まるで、「ありがとう」と言っているようでした。

              「そうだ、自己紹介しておくね。私はリリカっていうの。またいつでも遊びに来てね」
              と、リリカさん。ハリーも、「僕は、ハリネズミのハリーだよ。ポー、友達になってね」と言い、
              くーちゃんも、「私は、くまのくーっていうの。みんなはくーちゃんって呼ぶよ」と言いました。
              ポーは、「わかった」というように頷いて、みんなをきらきらとした目で見つめました。

              ハリーとくーちゃんとリリカさんは、外まで出て、コロンとポーを見送りました。
              「なんだか楽しい一日だったねえ・・・」と言いながら。
              しばらく、雨上がりの気持ちの良い風に吹かれながら、
              「そろそろお家に入ろうか」とリリカさんが言うと、
              ハリーが「あっ、あれ見て!」と大きな声で言いました。

              東の空に、きれいなアーチ型の虹がかかっていました。
              「うわあ、大きい、きれい・・・」3人とも、言葉もなく、見つめています。
              虹は残光を受けてきらきらと輝いて、まるで今日一日を祝福しているかのようでした。
              「ポーが見せてくれたのかも・・・」と、くーちゃんが言うと、
              うんうん、とハリーとリリカさんも頷きました。
              虹が消えるまでの短い時間、3人はまるで夢のように、七色の光を見つめていました。

              (おしまい)

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                雨の日の仔馬(2)

                仔馬は、いつのまにか眠ってしまったようでした。
                暖炉には小さな火が焚かれ、パチパチと気持ちの良い音を立てています。
                仔馬の寝そべっている床には、暖かな毛布が敷かれ、
                背中にはやわらかいタオルケットがかけられていました。

                仔馬が、あたりを見回しながら目をパチパチしていると、
                キッチンで何か支度をしていたリリカさんが気がついて、
                「ああ、目が覚めた?」と、にっこり笑って言いました。
                ハリーとくーちゃんも、リリカさんのそばで手伝っていましたが、
                仔馬が目を覚ましたのを見ると、そっとそばに寄っていきました。

                ハリーは、「お家に入って、寝そべってすぐ、眠っちゃったんだよ。よく眠れた?」と言い、
                くーちゃんも、「とっても気持ちよさそうにしていたから、起こさなかったの」と言いました。
                白い仔馬は、目をぱちくりさせながら、ハリーとくーちゃんを交互に見ていましたが、
                やがて満足そうに、大きなあくびをしました。

                「お腹がすいているんじゃないかなと思って、お菓子を作ってたの。
                 何が好きかわからなかったんだけど、ちょうどりんごがあったから、
                 アップルパイを焼いてるの。もうすぐできあがるよ」
                と、リリカさんが言い終わらないうちに、オーブンがチーンと鳴りました。

                リリカさんは厚手の手袋をして、オーブンからアップルパイを取り出しました。
                あたりにふわっと、りんごのいい匂いとパイの香ばしい香りが漂います。
                「わあ、おいしそう!」ハリーとくーちゃんは、もう、うっとりしています。
                仔馬にも匂いが伝わったのか、顔を上げて、くんくんと匂いをかいでいます。
                「じゃあ、みんなで食べましょう!」と、リリカさんはうれしそうに言いました。

                         *         *         *

                テーブルにお皿が並べられ、切り分けたアップルパイが載せられると、
                みんなうれしそうにテーブルを囲んで座りました。仔馬は立ったままでしたが、
                テーブルの高さは、食べるのにちょうどいいようでした。
                リリカさんは、ハリーとくーちゃんと自分には紅茶を、
                仔馬にはお皿に温かいミルクを入れてテーブルに並べました。

                「いただきまーす!」ハリーとくーちゃんは、かぷっとアップルパイにかぶりつき、
                そのおいしさに、「はあ〜」と、ため息をつきました。
                仔馬も、パクッと一口食べ、口の中でもぐもぐと噛んでいましたが、
                おいしかったようで、目をきらきらとさせました。
                リリカさんは、そんなみんなの様子を見ながら、うれしそうに、自分も食べ始めました。
                「うん、おいしい!」思わずそう言うと、ハリーもくーちゃんも頬張りながら
                「おいしいよ、リリカさん!」と言い、仔馬も、ほくほくと食べ続けました。

                すると、トントントン・・・と、玄関のドアを叩く、小さな音がしました。
                みんな食べるのに夢中でしたが、ハリーがその音に気がついて、
                「リリカさん、誰か来たみたい。トントントンって玄関で音がするよ」と言うと、
                「えっ、ほんと?」と、リリカさんは窓から玄関のほうを見てみました。
                すると、小さな黄色いものがいくつか、玄関の前で雨に濡れていました。
                「お客さんかな?」と言いながら、リリカさんは、「はあい」と玄関のドアを静かに開けました。

                (つづく)

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                  雨の日の仔馬(1)

                  梅雨時のことです。
                  ある日、リリカさんは、窓の外の雨の様子をぼんやりと眺めていました。
                  しとしとしと・・・やわらかい音を立てて、雨が降り続いています。

                  リリカさんは、お家で雨を見るのが好きでした。
                  いつもは光に揺れている樹々の緑を見るのも好きなのですが、
                  小さな雨粒に次々と弾ける葉っぱを見るのも楽しいものです。

                  そうやって、飽きることなく外の様子を眺めていると、
                  家の前にある、少し離れた大きな樹の下で、雨宿りをしている何かを見つけました。
                  白っぽくて、小さいとも大きいともいえない何か・・・。
                  ぼんやりと雨に煙っているので、それ以上はよく見えません。
                  何かよくわからないけれど、あんなところで雨宿りをしていたら寒いだろうと、
                  リリカさんは、傘をさして、家の外に出てみました。

                          *        *        *

                  樹の下に近づいていくと、それは、中くらいの白い仔馬だとわかりました。
                  じっと目を閉じて、雨に濡れないように樹に身を寄せています。
                  トントントン・・・リリカさんは、そっと樹の幹を叩いてみました。
                  すると、パチッ、と仔馬は片目だけ目を開けました。
                  リリカさんの姿を認めると、ゆっくりともう片方の目を開きました。
                  黒く澄んだ、くりくりとした目で、じっとリリカさんの姿を眺めています。

                  「こんにちは。寒くない?」リリカさんは、思いきって声をかけてみました。
                  白い仔馬は、黙って、じっとリリカさんを見つめています。
                  「私の家、すぐ近くなの。ほら、あそこに見えているでしょう」
                  と言って、リリカさんは、明かりの灯る小さな家を指さしました。
                  「よかったら、お家で、暖まっていかない?」
                  仔馬は、リリカさんの顔と、明かりの灯るお家とを、ゆっくりと何度も眺めていましたが、
                  しばらくして、ついに、「わかった」とでもいうように、
                  ブルブルっと体を震わせて、動き出す仕草をしました。
                  リリカさんはほっとして、「こっちよ」と言いながら、傘を仔馬にさしかけてやりました。

                          *        *        *

                  ハリーとくーちゃんは、家の窓から、リリカさんが樹の下で
                  何かに話しかけているのを、ずっと見ていました。
                  「リリカさん、誰に話しかけているんだろう?」
                  ハリーは、くーちゃんの顔を見ながらたずねました。
                  「なんだろう、白い、何か・・・」
                  くーちゃんは、窓の外を見ながら答えかけましたが、
                  「あっ、こっちに来るみたい。ハリー、タオルを用意しようよ」
                  と、急いでハリーの手を引っぱりました。

                  ハリーとくーちゃんが洗面所へ行って、なるべく柔らかそうな
                  大きなタオルを探していると、「ただいまあ!」というリリカさんの声がしました。
                  ふたりは、「あっ、おかえりぃ!ちょっと待ってて!」と言いながら、
                  大きなふわふわしたタオルを見つけて、玄関へと走りました。

                  リリカさんはにこにこしながら傘をたたんで、
                  「お客さんよ。雨宿りをしていたから、お家に誘ってみたの」と、
                  白い仔馬をハリーとくーちゃんに紹介しました。
                  仔馬は、伏し目がちに、そっとリリカさんの隣に佇んでいます。

                  ハリーとくーちゃんは、「こんにちは。はじめまして」と小さな声で言いながら
                  大きなふわふわしたタオルを、リリカさんに差し出しました。
                  「これで、体を拭いてあげて」と言って。
                  「ああ、ありがとう」と、リリカさんは受け取りながら、
                  「ちょっと、体を拭こうね。いい?」と、仔馬に話しかけました。
                  暖かい家の中に入って、仔馬はもう、眠りそうになっています。
                  リリカさんは、そっと、仔馬の体を拭いてやりました。
                  ハリーとくーちゃんは、リリカさんのそばに佇んで、その様子を見つめていました。

                  (つづく)

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                    そしていつか

                    君はすぐ
                    そうやって自分を小さく
                    見積もるけど
                    本当は全然
                    そんな必要はないと
                    思うんだ

                    有名だろうが
                    無名だろうが
                    君が誰であろうと
                    一生懸命生きていることに
                    変わりはないよ

                    君の代わりは
                    どこにもいない
                    宇宙に君は
                    たった一人

                    一人ひとりの顔つきが
                    違うように
                    与えられたことも
                    学んでいることも
                    きっと違うんだよ

                    自分の道を信じよう
                    そしていつか
                    前を向いて歩いてきて
                    よかったと
                    心の底から
                    思える日が来るといいね





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